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2020-01-24:

エマ・ワトソン UN Women 親善大使 国連でのスピーチ

今日、「HeForShe」というキャンペーンを発表します。

みなさんに呼びかけている理由は、みなさんの助けが必要だからです。私たちは男女差別を終わらせたく、そのためにはみなさんが関わらなければなりません。

このキャンペーンは、国連としては初めての試みです。できるだけ多くの男性、男子に刺激を与え、ジェンダー平等を呼びかけてもらいたいのです。私たちはただ単に話すだけではなく、実現させたいのです。

6ヶ月前にUN Women親善大使に選任されました。フェミニズムについて語れば語るほど、女性の権利を主張することが男性嫌悪に繋がってしまうことが問題であるとひしひしと感じています。この現象を終わらせ、世の中の意識を変える必要があります。

実際、フェミニズムは「男性も女性も平等の権利と機会を持つべきという信念、そして性別による政治的、経済的そして社会的平等の理論」という定義なのです。

「なぜ、フェミニズムという言葉は不快なものになってしまったのでしょうか?」

ずっと昔から、性別に基づいた疑問を感じるようになりました。8歳のときに、「偉そうにいばっている」と言われ困惑しました。親たちに見せる芝居を、私が仕切ろうとしたからです。しかし男子だと、そう呼ばれませんでした。

14歳のときには、私は一部のメディアによって性的対象化されるようになりました。

15歳のとき、私の女友達はスポーツをやめるようになりました。筋肉質になるのが嫌だったから。

そして18歳になると、私の男友達は自分たちの気持ちを表現できなくなってしまいました。

フェミニストであると決断した私にとって、フェミニズムは難しくない話だと思っていました。ところが最近調べてみたら、フェミニズムは人気のない言葉になっていたのです。

女性たちは、自分がフェミニストではないと言っているのです。どうやら私は、表現が過激で、攻撃的で、孤立させるようで、男を嫌う魅力のない女性として分類されているようです。

なぜ、フェミニズムという言葉は不快なものになってしまったのでしょうか?

「大事なのはフェミニズムという言葉自体ではなく、その背景にある考えや思い」

イギリスで生まれた私は、男性と同じ賃金を女性がもらえるのは正しいことだと考えています。

自分の体について、自分自身で決められるのは正しいことだと考えています。自分の国で、私を代表する女性たちが政策や意思決定に参加できるのは正しいことだと考えています。

男性と同様に女性も社会的に尊重されるのは正しいことだと考えています。

しかし悲しいことに、すべての女性がこのような権利をもつ国は、この世界にはひとつもありません。

この世界には、ジェンダー平等を達成したと言える国は存在しません。

これらの権利は、人権だと考えています。

しかし、私は恵まれています。本当に人生で恩恵を受けてきました。

両親は私が娘として生まれてきたからといって、与える愛情の量が減ったことはありません。学校は、私が女子だからといって制約しませんでした。私に助言してくれた人たちは、私がいつか子どもを産むかもしれないからといって、これ以上何もできないとは考えませんでした。

このような人々こそが今日の私を作り上げてくれた、ジェンダー平等の大使なのです。

気づいていないかもしれません。しかし、この人たちは無意識にフェミニストとして世界を変えていっているのです。そして、もっとこのような人々が必要なのです。

そしてそれでも、まだこのフェミニストという言葉が嫌いな場合——大事なのは言葉自体ではなく、その背景にある考えや思いなのです。

なぜなら、私が与えられている権利をすべての女性が受けているわけではないからです。統計的に見ても、ほんのわずかの女性しか享受していないのです。

 

「女性問題は、みんなの問題でもある」「男性も、平等の恩恵を受けているわけではない」

1997年に、ヒラリー・クリントンは北京で女性の権利についてスピーチをしました。悲しいことに、彼女が変えようとした多くのことは、今でもなお達成されていません。

しかし、最も衝撃的だったのは、この会議に参加していた男性が3割以下だったことです。女性のみが話し合いに参加している状況で、どうやって世界に変化の影響を与えることができるのでしょう?

男性のみなさん。この場を借りて、みなさんを正式にご招待します。

男女平等は、男性のみなさんの課題でもあるのです。

なぜかというと、私は母と同じく父の存在が大事だったのにもかかわらず、今日まで父は親としての役割を軽んじられるのを目にしてきました。

精神病に苦しんでいても、「男らしくない」と見られることを恐れて助けを求めることができない若い男性を見てきました。イギリスでは、20歳から49歳男性の最大の死因は、自殺なのです。交通事故、ガン、そして冠状動脈心疾患を上回っています。

男の成功という歪んだ意識によって、男性が傷つきやすく、不安定になっていくのを見てきました。男性も、平等の恩恵を受けているわけではないのです。

「ありのままの自分として定義し始めたら、私たちはもっと自由になれる」

男という固定概念に囚われている男性について、話すことは多くありません。しかし、私には固定概念を押し付けられていることが見えます。彼らが固定概念から自由になれば、自然と女性にも変化が起きるのです。

もし、男性として認められるために男性が攻撃的になる必要がなければ、女性が服従的になるのを強いられることはないでしょう。もし、男性がコントロールする必要がなければ、女性はコントールされることはないでしょう。

男性も女性も、繊細でいられる自由、強くいられる自由があるべきです。今こそ、対立した二つの考えではなく、広範囲な視点で性別を捉える時です。

私たちが私たちではないものでお互いを定義するのをやめて、ありのままの自分として定義し始めたら、私たちはもっと自由になれるのです。これが、「HeForShe」そのものなのです。自由であることなのです。

男性にも、この責任を引き受けてほしいのです。彼らの娘が、姉妹が、そして母親が偏見から自由になれるように、そして彼らの息子も傷つくことが許される人間でいられるように。

彼らが手放したこの一部を取り戻すことで、もっと自分らしく完全な自分でいられるようにです。

「私でなければ、誰がやるの?今やらなければ、いつ?」

「ハリー・ポッターの女の子が何を言っている?」と思っているかもしれません。「国連の壇上で何をしている?」と。良い質問です。自分自身にも同じことを問いかけています。ただわかっていることは、この問題を重要だと思っていることです。そして私はより良くしたいのです。

私がこれまで見てきたことを、この与えられた機会に発言することが使命だと思います。イギリスの政治家、エドマンド・バークはこう言いました。「悪が勝利するために必要なたった一つのことは、 善良な男性と女性が何もしないことである」。

このスピーチをするにあたって、不安や迷いが湧き上がったとき、自分自身に堅く言い聞かせました。

私でなければ、誰がやるの?今やらなければ、いつ?

もしみなさんも、機会を与えられて自分を疑うような場面に出合ったら、この言葉が役に立てばと思います。

なぜなら現実として、私たちが今もし何もしなければ、女性が男性と同量の仕事をして同じ賃金をもらうのに、75年もかかるのです。私は100歳になってしまいます。

1550万人もの女子は、これからの16年で子どもの間に結婚させられます。そして、現状だと、アフリカの農村部のすべての女子は中等教育を受けるようになるには2086年までかかってしまうのです。

もしみなさんが平等を信じているならば、みなさんは、先ほど話した無意識のフェミニストなのかもしれません。

そんなみなさんを賞賛します。

私たちは、分かち合えるような言葉を見つけられていません。しかし、嬉しいことに、私たちには一つになれる運動があることです。「HeForShe」と呼びます。

みなさんに、一歩前を進むようお招きします。見えるように。聞こえるように。「彼女」のための「彼」であるように。

そして、自分に問いかけてみてください。自分でなければ、誰がやるの?今やらなければ、いつ?

ありがとうございました。

藤原和博氏セミナー「親は子供に何を残せるのか」 藤原和博氏セミナー「親は子供に何を残せるのか」